生産技術研究所チュートリアル講演会「光渦の物理と応用」のお知らせ

皆様

以下の講演会を企画いたしました。ご講演者には、分野外の学生さんにもわかりやすいご講演をお願いしてあります。
是非ともお越し下さいますよう、ご案内申し上げます。

世話人:羽田野直道
(東京大学生産技術研究所基礎系部門)

——————————————————

生産技術研究所チュートリアル講演会「光渦の物理と応用」
場所:東京大学生産技術研究所千葉実験所(柏キャンパス)3階大会議室
hatano-lab.iis.u-tokyo.ac.jp/access.html
日時:11月2日(木)午後1時30分〜午後3時30分
主催:東京大学生産技術研究所基礎系部門(世話人:羽田野)

プログラム:

13:30-14:00
加藤政博(自然科学研究機構分子科学研究所)
「自由電子による光渦の放射」

14:10-14:40
久保伸(自然科学研究機構・核融合科学研究所)
「磁場閉じ込め核融合プラズマと光渦」

14:50-15:20
トミオ・ペトロスキー(テキサス大学オースチン校・東京大学生産技術研究所)
「古典力学における光の放出の解の怪:光渦、サイクロトロン放射との関連で」

——————————————————
アブストラクト:

加藤政博「自由電子による光渦の放射」

 通常の光は平面あるいは球面状の波面を持つ。これに対し約25年前に、螺旋状の波面を持つ奇妙な光(光渦)が存在し、スピン角運動量とは別に軌道角運動量を運ぶ、とする理論的な研究成果が発表された。その後、レーザー光を特殊な光学素子を通すことで光渦を生成する手法が確立し、情報通信、ナノテクノロジー、イメージングなど幅広い分野への応用を目指して活発に研究が行われている。
 一方、自然界における光渦の存在、あるいはその役割は、これまでほとんど議論がなされてこなかった。このような奇妙な光が自然現象として放射されるとは認識されていなかったようである。しかし、最近、円軌道を描く電子からの放射が光渦の性質を持つことが理論的に示され、また、シンクロトロン放射を用いた実験的検証も行われた。円軌道放射は、サイクロトロン/シンクロトロン放射、円偏光コンプトン散乱などの基礎を成し、宇宙物理学・プラズマ物理学から加速器光源技術に至る幅広い分野で重要な役割を果たす。従って、光渦は、天体周辺の磁気圏から高エネルギー加速器まで、自然界や実験室の様々な状況で自然に放射され、その波長は物理的なパラメータに応じて電波からガンマ線に及ぶはずである。
 本講演では、光渦とはどのようなものか、また、これまでの光渦に関する研究について短く概観した後、円軌道放射が螺旋状の波面を有し軌道角運動量を運ぶことを初等的な古典電磁気学で示し、その直感的な説明を試みる。また、高エネルギー電子が光渦を発生する実験的な証拠を紹介する。

久保伸「磁場閉じ込め核融合プラズマと光渦」

 地上で核融合を実現し、そこから発生するエネルギーをエネルギー源として利用するためには、一億度を超える高温高密度プラズマを安定に閉じ込めることが必要である。このためのプラズマ閉じ込め方法として盛んに研究されているのが、荷電粒子の集合体であるプラズマをローレンツ力によって磁力線に巻きつくサイクロトロン運動を利用する磁場閉じ込めである。このように磁場で閉じ込められる核融合プラズマにおいては、電子サイクロトロン運動ととそれに伴う電子サイクロトロン放射は閉じ込め概念の基本であるとともに、このプラズマを加熱したり、計測するために重要な役割を担っている。
 サイクロトロン運動する単一電子の放射が渦性を持つことが加藤らによって近年になって初めて理論的に示され、放射光において実験的にも検証された[M.Katoh et al. Phys.Rev.Lett. 2017]。この渦性が核融合装置からの電子サイクロトロン放射あるいは、加熱に用いられる電子サイクロトロン加熱装置の中でどのような形で現れるのか、どのような役割を担っているのか、あるいはもっと積極的に渦性を顕在化させる方法はないのか、また、顕在化させることで高強度の渦性を持った光源開発に繋がるのではないかという動機で、今年度から本格的な研究をスタートさせた。
 本講演では、核融合装置の電子サイクロトロン放射計測・加熱、また、それに用いる大電力ミリ波源であるジャイロトロンを簡単に紹介し、これらを用いた電子サイクロトロン放射の渦性を実験的に検証し、それを高強度化する計画を一部実験結果を交えて紹介する。

トミオ・ペトロスキー「古典力学における光の放出の解の怪:光渦、サイクロトロン放射との関連で」

 近年、サイクロトロン運動などで円軌道を描く電子からの放射が光渦の性質を持つことが実験的に示され、宇宙物理学・プラズマ物理学から加速器光源技術に至る幅広い分野で重要な役割を果たすものと期待されている。しかし、このような古典輻射減衰と呼ばれる光の放出を取り扱うために提案された良く知られたAbraham-Lorentz方程式は、因果律を破る解や時間的に発散する解を持つなど、力学の基本原理と抵触しており、この事象の理論的裏づけは未解決とされてきた。実は、この問題の本質は、物理学の基本方程式が全て、時間の向きに対称になっているのに、その対称な方程式からどのようにして時間の対称性を破る減衰解を導き出すのかという、物理学の最も基本的な問題の一つに関わっている。講演者は、この時間の向きの対称性の破れの問題を、故イリヤ・プリゴジン教授とともに長年携わってきて、その本質が次の1)から4)の事実にあることを明らかにしてきた。すなわち、
1)力学の解の表現の中には振動数が分母に現れることがしばしばある。さらに、その分母がゼロになる共鳴特異性と呼ばれる特異点が現れることがある。
2)しかし分母がゼロになる場合でも、その変数(ここでは振動数)が連続変数の場合には、その分母を超関数として数学的に無矛盾に定式化できる。
3)その結果、力学系の状態を表す関数が今までの通常の関数空間より拡張した関数空間の要素に拡張できる。
4)さらにその結果、時間の対称性を破る解が、力学の基本方程式から数学的に矛盾することなく得られる。
 この具体な応用例として、我々は今まで、主に連続場と共鳴特異性を持って相互作用をしている電子などの量子系の励起エネルギーの減衰過程の問題を取り扱い、多くの興味ある現象を見出してきた。今回、この量子系での取り扱いを古典力学系でも取り扱えるように改良して、長年未解決であった古典輻射減衰の問題が力学の基本原理に抵触することなく記述できることを示す。その応用例の一つとして、導波管内でサイクロトロン運動をしている荷電粒子が導波管の断面の長さ程度の波長を持った光の振動数と同程度で回転している場合の異常減衰について論じる。これは、量子系で良く知られているVan Hove特異性に対応する異常減衰であり、この現象は既存のAbraham-Lorentz方程式では記述不可能な現象である。

———————————————-
羽田野直道
277-8574 千葉県柏市柏の葉5-1-5
東京大学生産技術研究所

Phone: 04-7136-6977
Internal: 58974, 66977
Fax: 04-7136-6978
hatano-lab.iis.u-tokyo.ac.jp/hatano/index-j.html

————————————————-
Computational Material Physics Mailing List
home: www.issp.u-tokyo.ac.jp/public/cmp/
archive: cmp-ml.issp.u-tokyo.ac.jp
————————————————-