メーリングリストの皆様
東京大学生産技術研究所の李と申します。
羽田野研究室では、下記の通りセミナーを開催致します。
皆様の奮ってのご参加をお待ちしております。
なお、当研究室におけるセミナー情報は、次のリンクよりご覧頂けます。
hatano-lab.iis.u-tokyo.ac.jp/seminar.html
記
日時:2018年02月19日(月)14時〜
場所:東京大学 生産技術研究所 千葉実験所 研究実験棟Ⅰs307号室
道程:http://hatano-lab.iis.u-tokyo.ac.jp/access.html
講師:伊藤康介さん(名古屋大学・多元数理科学研究科・林研究室)
演題:時間とエネルギー不確定性原理による、量子マシンの仕事率の普遍限界
要旨:従来熱力学では、一般には動作時間を考慮しないか、無限時間の仕事量に対する普遍法則を確立してきた。一方、有限時間を考慮し、熱機関の単位時間あたりの仕事量である仕事率に対する普遍法則(どこまで普遍的な法則があるか分からないが)を確立することは、現実的により重要であるが、よりチャレンジングな問題である。近年、マルコフ性の仮定のもと、カルノー効率と有限仕事率とが両立しえないというトレードオフ関係を示す、仕事率に対する上限が導かれた [1][2] ことで、仕事率の普遍的理解への大きな進展があった。しかし、仕事率についての普遍法則は、未だ完全には確立されていない。実際現時点では、一般的にはカルノー効率と有限仕事率を両立しうる可能性も否定されていない [3]。特に、どのレベルで、何が仕事率の限界を決めるのか、系統的・普遍的な理解が望まれる。
そこで、その理解への一歩として、出来る限り少ない仮定のもと、一般的な量子系からの仕事の取り出しを考え、基本的量子論レベルで定まる仕事率の普遍限界を調べる。作業物質となる量子系 S と、これと相互作用して仕事を取り出すコントローラー系 A を量子マシンとして考える。特に、系 A には相互作用のオン・オフのスイッチまで陽に含めることとし、全系のハミルトニアンは時間変化しないが、操作の開始時刻までは2つの系は分離していることを仮定する。普遍限界の導出のための本質的仮定は、これだけである。このような一般的な量子マシンにおいて成立する、仕事率の上界を与える普遍的な不等式を示す [4]。この不等式によると、仕事率の限界は、コントローラーのエネルギーゆらぎによって特徴づけられ、エネルギーゆらぎが十分大きくなければ、仕事率は大きくできない。つまり、コントローラーのエネルギーゆらぎが、仕事率を得るためのリソースであることが明らかになる。この仕事率限界は、時間とエネルギーの不確定性原理 [5] にもとづく、量子力学的な時間発展の速度限界から来ており、量子論の基礎レベルで定まる仕事率の限界といえる。
さらに、コントローラー全体が、取り出した仕事を蓄える場合を考えると、仕事によるエネルギー増分を検出する際のノイズと仕事率とのトレードオフ関係として捉えることができ、検出可能な仕事量を得るためにかかる時間スケールが導かれる。また、理想的な時計仕掛けの量子マシンを具体モデルとして考えると、その仕事率として、我々のバウンドに定数因子 $pi^{-1}$ をかけたものが達成できるという意味で、我々の不等式が緩過ぎないことも立証される。
参考文献
[1] N. Shiraishi, K. Saito, and H. Tasaki, Phys. Rev. Lett. 117, 190601 (2016).
[2] N. Shiraishi and H. Tajima, Phys. Rev. E 96, 022138 (2017).
[3] G. Benenti, K. Saito, and G. Casati, Phys. Rev. Lett. 106, 230602 (2011).
[4] K. Ito and T. Miyadera, arXiv:1711.02322 (2017).
[5] I. Marvian, R. W. Spekkens, and P. Zanardi, Phys. Rev. A 93, 052331 (2016).
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李 宰河
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